満月動物園第弐拾四夜 ツキノオト
【期間】 2015年6月19日(金)~21日(日) 全5回公演
【会場】 シアトリカル應典院
【脚本・演出】 戒田竜治
【出演】
瑠璃(組紐職人) …… 上原日呂
彩子(瑠璃の婚約者)…… 河上由佳
朱鷺(ソングライター志望)…… 西原希蓉美
菖蒲(和装問屋勤務)…… 諏訪いつみ
鈍(にび)(死神) …… 丹下真寿美
珊瑚(死神) …… 竜崎だいち
杏(死神) …… 中村ゆり
常盤(ときわ)(瑠璃の妹)…… 加藤光穂
東雲(しののめ)(彩子の母)…… 古田里美
琥珀(彩子の年上の後輩)…… 信平エステべス
【ストーリー】
カノジョと7年付き合って、最近ようやくプロポーズして、カノジョがフィアンセになった思たら、2カ月も連絡つかへん。車にはねられて10メートルも飛ばされて入院しとったらしい。いやいやいやいや、連絡くらいしてや。その上、死神に取り憑かれてるとか言いだして、なんやねんな。なんも見えへんし。しかも、なんかフィアンセの部屋に知らん女が転がり込んでるし、同僚はヨメさんとモメとって仲裁してほしいって、知らんわ。結婚って自分と相手だけのことかと思てたら、なんや次から次から色々言われるし、自分のことだけで手一杯やっちゅうのに、ほんま知らんわ。死神が自分の死に様ポロッともらしたとか、後でええか―!? その話―!! って叫んだら月までとどくやろか?
【解説】
満月動物園が15周年記念にお届けする死神シリーズ[観覧車編]は、倒壊する同じ観覧車の別々のゴンドラを舞台にした一話完結型の5連作。突然の大事故に遭遇した人たちに取り憑く新米の死神が繰り広げる、笑いと涙の止まらないノンストップ・メルヘン!!
『死神としてあるべき姿が、いまいちピンときていない』と悩みながら、死んだ後に魂を譲ると契約して取り憑いた相手が「より良く生きる」手助けに一生懸命。それは「善良な魂ほど高く売れる」から。
【WEB】 http://www.fmz1999.com/24th/
今年、1年かけて再演されている満月動物園の死神シリーズ第3話に行ってきました。第一話「ツキカゲノモリ」・第二話「ツキノウタ」に続いての観劇です。
このシリーズは第五話まであるのですが、今回だけは死神役が河上由佳さんではないんです。それでも河上さんの演じられる彩子は、死に至る役で物語の中心人物です。
彩子は、プロポーズを受けたその日に交通事故に遭ってしまいます。生と死を彷徨う闇の中で、「まだ生きてたい!」と切実に願います。そして今一番近くに居るであろう神。死が近づいてきているのだから死神だろうとあたりをつけ、一心に死神に「助けて!」と祈り続けるが、願い叶わず、シンガーソングライターの朱鷺の部屋に突っ込んで、血だらけになり死んでしまいます。そこに現れたのはサンタから転職してきた新米の死神。今や少子化の時代、プレゼントを渡す子どもの数が少なくなってサンタも職に溢れているらしい。ということで転職したらしい。慣れない仕事でミスを犯し、後に観覧車の事故で死ぬ運命の彩子を間違って死なせてしまったらしい。こんなことを偉い神様に知れたら叱られてしまう。彩子を生き返らせて「このことは黙っていた欲しい」と彩子と契約を結ぶ…。
ということで、朱鷺の部屋に落ち血だらけのところからリスタート。
救急車を呼ぶが、その間に心和らぐようにと自らが作った歌を歌って彩子を勇気づける朱鷺。病院に運ばれ一命を取り留める。そして傷も癒え退院したのちは、朱鷺の家がもう住めない状況になったことや朱鷺も夢を追いかける貧乏ぐらしお金もないので彩子の家で同居することになる。彩子からすれば死神同様に命を救ってくれた朱鷺を快く向かい入れる。
いつもの死神シリーズと同様に死神は、あの世から舞い戻った彩子に終始付きまとい助言を与える。ここまでおせっかいなのは、この死神の一人娘 彩の唯一の子孫に彩子が当たるからだという理由と、生前は良い生き方をすればあの世に行った時、彩子の魂が高く売れないからだ。そこへあの世から同様にサンタからとらばーゆした死神仲間の2人が乱入してくる。彼女らも彩子の遠い先祖にあたるらしい。
婚約した彼女が突然姿を消してしまった瑠璃の方は、事故に大変な事故に遭ったとしても約2カ月連絡もしない彩子をそれほど咎めたりしない。大雑把な性格をよく知っているし彼自身も穏やかで優しい性格によることも大きいだろう。
しかし、イベント仕事が忙しいことや婚約者そっちのけで同居し始めた朱鷺と共にすることが多いことに彩子の行動に、瑠璃は二人の関係にズレが生じ始める。
そこに、
●瑠璃の妹の恋愛話
●取引業者の女:菖蒲
●突然、熟年離婚を考えていると言い出す彩子の母
●彩子の会社の後輩男の夫婦の不和話
などが絡み合ってくる。
彩子は大雑把でサバサバした性格。
死神に「観覧車に乗って死ぬ」と予言されていても、観覧車を避けてメソメソと過ごしたりするのは大嫌い。いつだかわからないんだったら、毎日観覧車に乗ってやろうと考え、それを実行するなんというポジティブ人間。
毎日乗ってもなんともない観覧車だったが、Xデーは突然やって来た。
最上点に達し揺れだす観覧車。手にはその日「求婚した河原で、もう一度妻に今日ポロポーズする」と言っていた会社の後輩の彼のために観覧車の窓から点火した打ち上げ花火を持った手を伸ばす彩子。
瑠璃は、彩子のいない部屋で和ハンカチをたくさん見つけ出す。
彩子がかつて「父がいつも家を出るときに母が手づくりの和ハンカチを渡しているのを観て、いい夫婦だな」という話をしていたことを想い出し、これは自分に渡そうとたくさん作っていたのだろうかと…瞼を潤まし、彩子に会おうといつも乗っていた観覧車に向けて走り出す。
しかし、そこにあるはずの観覧車は…。観覧車はもうそこにはなかった…。
哀しい結末だが、悲劇のようにはならず、彩子が去った数十年後も舞台では描かれます。
瑠璃の妹や彩子の後輩などの幸せの欠片が見え、彩子の母も離婚は踏みとどまったて父と暮らしているようだ。
そして、瑠璃はシンガーソングライターになった朱鷺と結ばれます。そして生まれてきた娘には「彩」と名付けた…。
不器用にしか生きれない人たちの愛にあふれた群像劇。
この死神シリーズでいつも、不器用でぶっきらぼうな言動の死神を演じている河上さんが、今回は死に直面する役回り。それでもやはり不器用で上手に愛を伝えられない彩子を見事に演じていました。
サンタがちょっと季節感なさすぎと思いました。この話を第五話の年末に持ってこなかったのは第五話もクリスマス系のお話だからでしょうか?今から楽しみです。
★★★★☆
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051-0621 満月動物園第弐拾四夜「ツキノオト」千秋楽を観劇。
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